HSCは敏感すぎる?NHKシブ5時のHSC特集を観て思う、次回取り上げて欲しい事
こんにちは、秋田でHSC子育て講習会を行っているヒロタです。
昨日の夕方、NHKの『ニュース シブ5時』で、HSCの特集が組まれました。
比較的多くの人がご覧になる夕方の時間帯にNHKさんで取り上げられたことは、HSCの認知を広めたいと願っている私たちにとっては、とても嬉しい出来事でした。
まず、知ってもらうことが、第一。
その想いには違いないのですが、番組を観て、
・もう少しここを取り上げて欲しかったな
・ちょっと違和感があったな
と思う部分について、また、改めてもっと知ってほしい!と思ったことなどを、今日は書きます。
番組製作者の方、これからHSCを報道で取り上げようと考えている方に、そして、HSCの子どもたちと日々関わる方たちに届いたら嬉しいです。
※私は『HSC親子の安心基地』に構築メンバーとして参加していましたが、今回の放送に出演された方とこの特集についてのやりとりは一切していない段階でこの記事を書いています。
ですので、この記事に書く内容は全て私個人の感想や想いであることを、あらかじめお断りしておきます。
もっと知ってほしいこと。ひといちばい敏感な子、HSCの本質
多くの人が観る番組では、わかりやすさがとても大事だと思います。
だからこそ、専門用語はあまり使わない説明がスタジオでされたことは理解できるのですが、その上で、もう少し詳しく、
・HSC・HSPの本質的なこと
・どんな対応が必要なのか?
についてももっと詳しくお話しがあったら嬉しかったな、と感じました。
(対応についてはVTRの中で『HSC親子の安心基地』メンバーのお母さんから、実際に工夫したことのお話しがありました。)
深く処理する
その名前からも、まず注目されるのがHSCの「敏感さ」
番組でも、特徴として最初に取り上げられていたのが、音や光、肌ざわり、匂いなどに敏感という部分でした。
2019.6.27放送 NHKシブ5時番組内『HSC特集』より引用
もちろん、それはHSCの大きな特徴であることに違いないのですし、一番わかりやすい特徴でもあるとは思います。
ただ、それと同じくらい知って欲しい!と思うのは、HSCの本質的な性質と言われている『深く処理する』『感情反応の強さと共感力の高さ』。
番組終了後、ツイッターで思わずこんな風につぶやきました。
NHKのHSC特集みました
取り上げてもらえるのは嬉しいし、まずは知ることからだし、わかりやすいのは敏感さなんだけど…
HSCの一番の本質『深く処理する』の部分を取り上げてもらえたら、より良かったなぁ。#シブ5時 #HSC
— ヒロタ@HSC子育て&HSPママサポーター (@hiroeaaa1976) 2019年6月27日
HSCの根底には下記の4つの性質がある、と言われています。
1.深く処理する
2.過剰に刺激を受けやすい
3.感情反応が強く、共感力が高い
4.ささいな刺激を察知する
出典:「ひといちばい敏感な子」エレイン・N・アーロン著 /明橋大二訳/1万年堂出版 P425-432
2番目の「過剰に刺激を受けやすい」が注目されがちなのですが、HSP当事者としては、それと同じくらい1番目や3番目を理解してもらえると嬉しいのです。
※3番目の『感情反応が強く、共感力が高い』については、スタジオ出演されていた関西大学教授の串崎真志先生から、『人に対する敏感さも強くなりますので、大人や周りの友だちの顔色を窺ってしまって・・・』という表現で伝えられていました。
それには、人の気持ちも自分のことのように感じる【境界線の薄さ】についてや、「気にしないように」などの言葉は逆効果であることなども詳しくお話し頂けたら、良かったな…と思いました。
特に【1.深く処理する】の部分が特に本質的な部分で、「4つの特徴の中で最初に来ているのは意味がある」と、『ひといちばい敏感な子』を訳された明橋大二先生も、講演会でおっしゃっていました。
『深く処理する』とは、感じた情報(その時、見えているもの、聞こえているもの、雰囲気等々)を深く処理する脳の部位の働きが活発だということです。
情報をじっくりと処理して、【安全確認】をしているのです。
この様子がHSC・HSPは慎重と言われる理由だと思っています。
本来、慎重なのは決して悪いことではないはずなのですが、周囲の人から見るとその様子が「臆病」「心配し過ぎ」で【治すべきこと】と映ってしまう場合があります。
そこで、みんなと同じようなペースで出来るように促してしまうことになると本人のペースが守られず、安心感がそがれることになります。
だからこそ、
●その特徴が理解されて、
●急かされず、
●無理に慣れさせたりすることなく、
●それぞれのペースを尊重した対応、
が、大切だと知ってほしいです。
『深く処理する』性質を知ってもらえたら、すぐに新しい環境に入っていかない様子なども【今は、じっくりと情報を処理して安全確認をしているところなんだな】と、理解しやすいと思うのです。
そんな環境であれば、HSCは必要以上に臆病になったり心配性になったりすることもないのです。
番組の中で、斎藤暁子さん(『HSC子育てラボ』『HSC親子の安心基地』主催)のコメントの一部として『HSCの子どもの心を守るのがこの社会の中ではとても難しい』と放送されました。
2019.6.27放送 NHKシブ5時番組内『HSC特集』より引用
その後、事例の紹介などのVTRが流れた後、スタジオでは、『敏感すぎることが生きづらさにつながっていってしまう・・・ということなんですね』というコメントもあったのですが、正確に言うと『敏感すぎる=生きづらい』ではないのです。
(『敏感すぎる』という表現についても感じるところがあり、この記事の後半に書きました。)
今の社会では、HSCの敏感さや、ものごとをじっくりと深く処理する性質が否定される場面が多く、また自分のペースが守られず安心感を持ちにくい場面も残念ながら多い。
その結果として、HSCの子は自己肯定感が持ちにくく、生きづらさにつながってしまうということです。
(または、必死に頑張っていい子でいるHSCも多いです。でもそれはずっとは続かない為、いつかはそのストレスがドッと表に出てしまう場合もあります。わたし自身がまさにそのタイプでした。)
こういった現状が、前述の発言の『HSCの子どもの心を守るのがこの社会の中ではとても難しい』ということなのでは、と私は感じました。
HSCの特性=悪い・生きづらいではなく(番組の後半でもお話が合った通り、素晴らしい可能性をたくさん持っている気質なのです。)もちろん、それが治すべきものでもなく、伸ばしていくことが大事、その環境作りが大事なのです。
そのために必要な環境が、『HSC親子の安心基地』のような場所で得られるお母さんお父さんの安心感であったり、周囲の人の理解だったりすると考えています。
特別扱い?本当はどの子にとっても必要なこと
HSCの特性に合った配慮をお願いする場合、『特別扱い』では?と捉えられるかもしれません。
でも、例えば、【大声で怒鳴る人が居ると恐怖感があるから大きな声で叱らないでほしい】、【自分のペースが尊重されると安心できる】といったことは、HSCの気質を持っていな子どもにとっても当てはまることだと感じます。
「HSCの子にとって必要なことは、実はすべての子にとって必要なこと」なんです。
アメリカでHSCの専門家の人と話をしてきたときも言っていたのですけれども、「HSCの子にとって必要なことは実はすべての子にとって必要なことなんだ」ということです。私は全く同感です。
学校の先生のどなり声っていうのは、やっぱりHSCの子でなくても嫌なんですよ。
そういうことをひといちばい敏感に教えてくれているのがHSCの子どもたちです。ですから、HSCの子に配慮することで、すべての子にとって生きやすい世の中ができるんじゃないかと、基本的にはそういうふうに思っています。
『教えて、明橋先生!何かほかの子と違う?HSCの育て方Q&A』明橋大二著/1万年堂出版 P123.124より引用 ※太字赤字も原文のまま
HSCに対する配慮を、『特別扱い』ではなく、すべての子どもにとってより良い環境を作るきっかけとして捉えて頂けたなら、こんなに嬉しいことはありません。
HSCは「敏感すぎる」?
「敏感すぎる」という表現についてこんなことを言うと、まるであげあし取りのように感じられてしまうかもしれないのですが、HSP当事者からすると「敏感すぎる」という表現そのものに「そんなに敏感では困ったね」というような、ネガティブなイメージを感じてしまうのです。
『ひといちばい敏感な子(原題:The Highly Sensitive Child)』を訳した明橋先生は、著書『HSCの子育てハッピーアドバイス』の中で、「敏感すぎる子」ではなく「ひといちばい敏感な子」と訳された理由を書かれています。
HSCを「敏感すぎる」と解釈した時点で、既にHSCに対するネガティブなレッテル貼りが始まっていることを、私たちはよくよく注意しなければならないと思っています。
『HSCの子育てハッピーアドバイス』明橋大二著/1万年堂出版 P47より引用
私はHSC・HSPの性質自体がいいとか悪いとかで判断するものではない、と思っています。
(HSPの概念に出会ってから、今までは「何かおかしい」と感じていた自分の感覚を認められるようになり、些細なことも深く考え味わえるこの気質を、「かけがえのないもの」として捉えられるようになりました。だから今の私にとってはHSP気質は素晴らしい良いものなのですが、それは私にとってはそうだということで、非HSPとHSPどちらが良いかということではありません。)
その人それぞれの気質があって、それぞれに合った役割や居場所があります。
環境に合うか合わないかで、良いとか悪いとか評価されてしまう。これは敏感さに限らず、どんな特性であってもそういう側面があると思います。
その環境や役割にとっては○○すぎる、ということはあっても、それが一人のひとに対するネガティブなイメージにつながって欲しくはないのです。
そういう意味で、『The Highly Sensitive Child』を『ひといちばい敏感な子』と訳してくださったことが、とても嬉しいです。
そう感じているHSP・HSCは決して少なくないと思っています。
まとめ
今回、NHKさんでHSC特集が取り上げられたことは、とても嬉しかったです。
今後も是非、こういった特集を組んで欲しいと思います。
その時には
・HSCの4つの特性(DOES)についてと、それがどんな風に現れるか?(より深く気質を理解する為の知識)
・具体的に、本人の心をどうやって尊重していくか?(周囲の人はどんな行動を取ったら良いか?)
・HSCにとって必要な対応はすべての子どもにとっても必要、ということ
などを、今回よりさらに深堀したテーマで放送して頂けたら嬉しいです。
HSPやHSCを育てているお母さんもSNSで発信したり、身近な人に伝える機会を持ったり(これは勇気のいることではあるのですが)、当事者からの発信によって社会の理解が得られるようになっていくといいなと思っています。
7月に登園・登校しぶり・不登校への対応に迷う方を対象にしたHSC子育て講習会を開催予定です。
ご興味のある方はこちらの記事をご覧ください→こちらの講座は終了いたしました。
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